院長コラム
Column
阿吽の呼吸
2019年10月31日
ラグビーの日本代進撃も南アフリカでの試合にて終わりましたが、これからの活躍が楽しみです。
頭の中がラグビーで満たされているようで最近のコラムはその話ばかりですね。残り2試合のご容赦です。
体格に劣る日本代表がテンポのいいスピードと技術で相手を翻弄し一心不乱に頑張る姿は日本のみならず世界を魅了し感動を与えました。そして日本中の多くの人が応援しました。
ラグビー大国以外での盛り上がりにラグビー界でも転機となる記念すべき大会となったのでしょう。
温かく礼儀正しい日本からの応援に世界は歓喜しました。いずれの国も自国代表の次に日本を応援したそうです。
応援してくれた人を敬い、相手にも敬意を払うという控えめな日本の文化はラグビーと相性がいいような気もします。
他国の代表チームも頭をさげてお辞儀で感謝の気持ちを示し、その上清掃を手伝うチームもあったそうです。
数日前、早朝のクリニックへの出勤時に道に迷っている外人の方がおられ道を聞かれました。アイルランドからラグビーの応援にきたとのことでした。
時間に余裕があったため、10分ほど遠回りをして目的地まで一緒に連れて行ってあげたのですが、日本人は本当に親切だということで、とても感謝されました。
日本の評判の向上に少し貢献できたような気もして私自身も嬉しい気持ちになりました。
これからも日本人として恥じないように行動していきたいものですね。
少し話がそれますが、大阪みなみはコンパクトでいろいろなところを歩いて回れるのでよいとの評判でした。
日本がここまでの躍進ができたのは、大変な努力や用意もされましたし様々な理由があるのでしょう。
その中でも240日に渡る合宿をとり、チームのコミュニケーションがよくなったことが大きいのだと思います。前回のWCでもそうでした。
同じ仲間で練習を繰り返すことにより、あらためての言葉は必要なくなり情報伝達や処理がスムーズになります。いわゆる阿吽の呼吸がでてきます。
日本代表チームの武器であるスピード感あふれるオフロードパスは、パスを受ける人とパスをする人のスキルや特徴を理解した阿吽の呼吸があるからこそ成功するのでしょう。
個々の力では、海外の一流選手にはかなわなくても、集団でのスキルや戦略をうまく使うことによりなんとかできるのがチームスポーツの面白いところです。
もちろん体力をつける、体を鍛える、技術をみがくなど基本的なスキルの向上は大切ですがすぐにはうまくいきません。
その代わり同じ仲間で戦術をたて、繰り返しその練習することによりコミュニケーションをうまく図るほうがより効率的なのだと思います。
他のスポーツでも直前になり海外で活躍中の高名な選手を代表としてかき集めるのではなく、阿吽の呼吸がとれるまで練習時間をしっかりつくったほうが、チームの強化につながるような気もしてきます。
もしかしたらコミュニケーション能力のさらなる追求はこれからの日本の代表チームの目指す道なのかもしれませんね。
いざ医療を振り返ってみても阿吽の呼吸はとても大切なのだと感じます。
特に、手術や救急医療では阿吽の呼吸の意義が高いような気がします。
新人や慣れていないスタッフのより集めの場合、一つ一つ確認しながらの手法が必要なので時間がかかりますし、ミスもでてきます。
一方、慣れた手技で決まったスタッフや環境では、阿吽の呼吸で流れるように処置をすすめることができますし、トラブルにも素早く対応できます。その結果、治療時間が短くリスクも低くなります。
不整脈のカテーテル治療においても、流れるようにスムーズな阿吽の呼吸の治療が決められた時間でのパフォーマンス最大限にし、治療のリスクを低下させるのだと感じています。
そしてクリニックでの日常診察でも、繰り返す検査や診察の積み重ねにより、少しの顔色や雰囲気のかわりようでその人の変調や要望をすぐさま知れるような阿吽の呼吸が大切なのだと感じます。