院長コラム
Column

日常の孤独感

2019年11月21日

「ポツンと一軒家」という番組が放映されており、視聴率もよく人気があるようです。人里はなれた田舎でポツンと生活されている人を探して、その生活を紹介するプログラムです。興味深いので私も時折視聴しています。

一見、住んでいる人はさぞかし寂しくと孤独を感じているのではとも感じてしまいますが、かならずしもそうではないようです。

人懐っこい人も多く、孤独感を感じることなくマイペースで機嫌よく過ごしている方も多そうです。

周りの人が少ないから孤独を感じるというわけではなさそうです。

日常のストレスのある生活に疲れている人では、田舎でマイペースに生きていくということに憧れ、共感しているのかもしれませんね。

超高齢社会を迎え、独居老人の問題が取り上げられていますが、楽しくすごされている方も多そうですし、孤独感は人によるということでしょうか。

プレジデントというビジネス雑誌に孤独についての調査が掲載されていましたのでその一部を少し紹介します。

孤独は年配の人より若い人のほうがより強く感じるようです。確かに自らのこと思い返してみても学生時代は友達や周りの人のことが本当に気になりました。

精神科医の調査によると、SNSで友達が多い人や腹を割って話せる親友の数が多いと答えた人ほど孤独を感じているそうです。

本来SNSは友達を探して、そのつながりを求めることを目的としているはずなのですが、それに費やす時間の多い人ほど孤独を感じて幸福度がさがっているという予想に反した結果です。

孤独を感じているから友達を探すということもあるのかもしれませんが、一方では友達が多いという自慢話も寂しさの裏返しなのかもしれませんね。

特に学生の間では、SNSサイト内で仲間外れなどの虐めの問題も指摘され、いじめられた人はますます孤独を感じそうです。

私も以前はSNSのフェイスブックの掲示板で自らの生活の一部やラーメンの食べ歩きのことを紹介していた時期があります。

やり始めの時はもの珍しさでいろいろ試して、時折いただけるコメントや友達が増えたりすることで少しわくわくするような気持にもなりました。

しかし、受動的に目に飛び込んでくる情報や人の行為を気にして振り回されたりするのがだんだん煩わしく感じてしまい、最近ではほとんどみなくなってしまいました。今ではメッセージの機能だけを使用しています。

人のこと知り、それを気にするからかえって孤独を感じるという気持ちはわかるような気もします。

また、職業としては、運送業や社会のインフラ工事などに携わっている人は孤独を感じにくいそうです。

忙しく働いている、周りの人に感謝されやすい、チームとして役割が期待されているなどの背景を多くもつ人が孤独を感じにくいのかもしれません。

私自身クリニックで一人診察するのは孤独を感じるのではないですか?と知り合いの勤務医に聞かれることがあります。

確かに勤務医の時は、病院や学会、研究会などで医師、医療スタッフ、会社関係者など今より接触する機会がありました。そして同じような境遇の医師やスタッフと会話する時間も長かったのだと思います。

今よりは日常生活での友達の数は多かったのでしょう。

しかし独立して一人で診察をしていても孤独が増えたと感じるということはほとんどありません。以前のほうが、集団の中での孤独感を感じることがおおかったような気もします。

意外といろいろ忙しくして目の前に起こったことに集中しているから考える暇がないのかもしれません。

そして患者さんからときおりいただける感謝から力をえていることもありそうです。

もしかしたら自分の日常生活に満足できず、暇だからこそ他人のことが気になって孤独を感じてしまうということもあるのかもしれませんね。

孤独を感じるから友達をどんどん増やしてその反応に期待するのではなく、逆に人のことを気にしすぎずに目の前のことに集中して今を生きることがその寂しさをやわらげることにつながるような気もします。

一覧に戻る