院長コラム
Column
コロナ不況
2020年05月15日
新型コロナ感染症による自粛生活も長くなり、しばらくの間は大阪みなみでも飲食や販売店は閉まり、人通りが少なくなっています。
もちろん海外からの観光客は完全にとだえ、その状態がしばらくは続きそうな気配です。
大阪が元気になってきたのは、海外からの旅行者を当てにしたインバウンドによる経済効果ですので、コロナ感染による経済停滞がひどくなるような気もして心配です。
少し前にはクリニックの通勤時に気づく建設中のビジネスホテルが希望の星に見えたのが、今では逆にその先行きを心配してしまいます。
多くの飲食店が閉店しているためか、いつも決まった場所に出会う野良ネコもみるみる痩せてきたような気もします。
食べるものがなくなっているのではと急に心配になり、キャットフードを少し与えてしまいました。もちろん野良ネコに餌をやるのはよくないですが、今回だけの緊急補助処置です。
特に大阪「みなみ」は「きた」に比較して中小の個人商店がおおく、街並みには小さな店が立ち並んでいます。
中小企業や個人事業主の場合、数か月の売上がなくなると廃業する心配がありますので、政府の資金補助や支援が必要になるのでしょう。景気の低迷が続くと大企業でもそれに持ちこたえる余裕はないのかもしれません。
働いている人の9割は給料所得のいわゆるサラリーマンですので、倒産、廃業といっても少しわかりにくいかもしれませんので少しだけ概説します。
例えば店を経営・維持するにはもちろん家賃、人件費、材料費、宣伝費、機材のレンタル費など様々な経費がかかります。おそらくほとんどの場合は売り上げの半分以上はその運営経費になっているのでしょう。
返済が必要な多額の融資をうけている場合、その維持費用はもっと多くなり自転車操業になっているのかもしれません。
サラリーマンの人から見ると売上が半分になると給料も半分という思われるかもしれません。しかし現実には売上が急に半分になってしまうとそのすべてが運営経費に消えてしまい、すぐに営業すればするほど赤字が積みあがるということになってしまうのです。
クリニックももちろん他人事ではありません。私自身クリニックを開業することにより、勤務医時代には意識していなかった運営の厳しさに気づきました。
コロナ感染による被害として、まずは観光業や飲食業などが思い浮かぶかもしれません。しかし実は医療もコロナの影響をかなり強くうけている業界なのです。
病院やクリニックでもコロナ感染を心配したかなりの受診抑制がおきています。内科では来院される患者さんが半分程度、感染症の患者さんの多い耳鼻科や小児科では8割減というところもあるようです。
多くの融資を抱えた新規開業やほそぼそと診察を続けているクリニックでは、廃業の危機にたたされています。
おそらく医療崩壊寸前とされるコロナ感染で忙しくなった病院でも、コロナ感染以外の部門の診療がうまく回っていないので赤字経営なのでしょう。
コロナ感染による受診の変化のため、クリニックや病院の統廃合がおこり医療の再編がするむのではといううわさも聞いたこともあります。
先立つ中国武漢では、コロナ前に比較して9割の医師の収入が減り、以前の2割の収入になった人もいるとのことです。
本来医師としてはコロナ感染のリスクを回避するために自粛を啓蒙し、受診患者が少なくなっていることを喜ばないといけないのでしょう。しかしそれが自らの首を絞めるということには矛盾を感じてしまいます。
今後のコロナ感染による不況は、経済対策をきっちりとしないとリーマンショックを超え、世界恐慌にも迫る可能性があるという経済評論家の意見があります。
最近の報告ではアメリカの失業率は約15%にのぼり、世界恐慌以来の失業率の高さです。
そして経済不況が続くとかならず自殺者が増えます。生活に困窮して心や体を壊される人もでてきそうです。
人間は今までもっていたものや居場所を失ってしますとかならず、敵意や差別がでてきます。そうあるべきではないと思っても動物としての隠された本能の一つなのかもしれません。
世界恐慌の後の経済の低迷が第二次世界大戦につながり、財産を失ったことによる民衆の憎しみが、ナチスドイツの台頭とユダヤ人の大量虐殺につながった歴史的な事実については冷静に受け止める必要があります。
目の前の人命を最優先に考えるいわゆる人道的な政策が、蓋をあければより多くの命を奪ったということにならないように注意が必要なような気もしてきます。
コロナ対策を考えるにあたり、人の命?か経済か?という対立的な比較ではなく、大阪の吉村知事も言っているように対立するものではなく共にあるものなのでしょう。
幸い長期の自粛に加えて日照時間も増え急にあたたかくなってきたことも重なってか、新規のコロナ感染の患者さんが減ってききました。
大阪も今日から大阪モデルとして一部の業界からそろそろ経済活動の再開も兆しです。大阪の元気が戻ってくるのを願うばかりです。