院長コラム
Column
誹謗中傷
2020年06月04日
女子プロレスラーの木村花さんが、自ら命を絶たれました。テラスハウスという男女の恋愛模様を描く企画での言動へのSNSでの誹謗中傷からです。
バーチャルと現実の合間の勝ち抜きゲームです。恋愛模様をより過激で面白く見せるために、番組スタッフから過激な言動をする指示があったのでしょう。
今のビデオゲームはかなり過激で、目の前の気にくわないキャラクターはすぐ消滅させてしまうことができます。ゲーム感覚で誹謗中傷をする人もいるのかもしれません。
誰もわからない匿名だから、好きなことが言えるのでしょう。
一部の攻撃的な人の書き込みに感化され、炎上するというのもありそうです。
SNSでの誹謗中傷の話は、学生時代のいじめでもよくみられます。少し前に3年A組という人気ドラマがありました。SNSでの誹謗中傷に傷つき、自殺をしてしまった女子学生に焦点を当てた物語です。
匿名による誹謗中傷による事故は繰り返し起こっています。これからのネット時代、このような問題はどんどんでてくるような気もして心配にもなってきます。
加害者もまさか自殺をするとは思っていなかったのかもしれません。
もちろんプライバシーの保護、言論の自由も大切ですが、もう少し被害側にたった対応があってもいいように感じてしまいます。
なんとかこのようなことが起きないようにしてほしいものです。
教育をする立場の人なら、そのようなことが起こらないようにしようと教育、指導するといわれるのかもしれません。
もちろん対応の改善はえられるのでしょうが、すべての状況を矯正できるわけではないのでまた形を変えて同じような問題がでてくるような気もします。
法律の立場であれば、あまりにもひどい誹謗中傷であれば裁判に訴えることで解決を探るべきだといわれるのかもしれません。
しかし、精神的に弱って不安定になっている人に対してはかなりハードルの高い酷な行為です。
個人的な医師の立場からすると、誹謗中傷により命を絶たれる人は、その時に一過性のパニックやうつ状態となり、心のバランスを崩した病気の状態なのだと感じます。
心が病気の状態ではいくら正論を説かれてもうまく受けいれることができません。
非難中傷をする加害者の人も心が病んでいるのかもしれません。そのために自分と同じように気に入らない人を傷つけたいと思うのかもしれません。
人は誰でも寛容さと残酷さを合わせもっています。それは社会情勢や環境の変化によりいろいろな感情がでてきくるのでしょう。
普段は穏やかな人でも心のバランスを崩すと人を非難したいという気持ちがでてくる時もありそうです。そしてその感情はいつの時代、状況でも繰り返して起こってくるというのが人間の本質なのかもしれません。
誹謗中傷を受けて心のバランスを崩してしまった場合、まず周りの人が早々に察知してうまくサポートしてあげることが大切です。
それでもうまく解決できない場合は薬をのんで症状を和らげるという選択もあります。その時は早々に神経科や心療内科のある病院やクリニックを受診したほうがよさそうです。
キリスト教やイスラム教では、人々はいつも神様に見張られているから人や神様に恥じる行為はしないようにと心がけます。
我々がスピードカメラに見張られているからスピード違反をしないようにすることと同じことなのかもしれません。
見張られているから自らを律し、容易に人を傷つけたり恥じることをしないということはあるのだとおもいます。
隠れたSNSでの誹謗中傷により傷つき命を落とす人を救うためには、個人の良心に期待するだけではなく、度をこえた過度な誹謗中傷行為を見張るようななんらかの仕組みが必要なような気がしてきます。