院長コラム
Column

医師への風当たりー今昔

2020年08月06日

コロナ感染もますます広がりを示し、医師や医療スタッフのストレスも増えてストレスもたまっています。

某大学病院では、忙しく苦労が多いのにかかわらずボーナスが支給されないという理由から400人を超える看護師が退職希望であるという報道もありました。

コロナ禍では多くの病院に収益が急に悪化し、赤字になっているからです。

マスコミの報道によると、多くの人はそのボイコット行為を理解し、非難するわけではないようです。

コロナで苦労している医療スタッフには給付金も考慮すべきであるという政府案もでています。

個人的にも、リスクを負い苦労した人それに応じた報酬をえるべきであると思います。しかし、一方では日本でも世間の医療への風当たりは優しくなったものだと感心するとともに少々の違和感を感じます。

ひと昔前なら、患者さんが困るだろ!、命を差し置いてお金のことをいうなんてとんでもない!という非難がでたような気もします。

さすがに、医師が報酬を理由に集団退職したということであれば今でも世間は総スカンでしょうね。

医師を志して30年以上になり、ふと振り返ると医師に対する世間の風当たりはそれぞれの時代において違っているような気もします。

その変遷について感じたことを個人的な独断の偏見で書いておきます。

私が医師になるもっと前の時代は、お医者様といわれていた時代はかなり権威的だったのでしょう。

そして国民皆保険の導入や老人医療は全額国が負担という時期もあり、医師は金銭的にはかなり余裕のあった一方、それに対する非難もでてきたのでしょう。

私が医学部に入った時は、医者はとにかく偉そうでお金持ちというのが一般的なイメージでした。

家はお金持ちなのですね、お金があるから医学部に入るのですね、医者になるのにいくら払ったのですかなど、何度聞かれたかわからないほどです。

私自身は地方の医学部で派手さとはかけ離れていた質素な学生生活をすごしたと思うのですが、それでもことあるごとにお金のことは聞かれました。お金に厳しい大阪の大学を卒業した医師はなおさらだったのかもしれませんね。

そしてお金のことは度外視してもっと働くべきだという批判もでてきたのかもしれません。

医師になって働き始めた時は、医師はお金のことをいうなという批判など、なにかと医師のくせにといわれるのが少々気になった時期でした。

そして金銭的にも昔はよかったけど、今はダメですという勤務条件もでてきました。

また、医師は偉そうで高慢なのはよくないとの意見も強かったような気もします。患者様は神様だという謙虚な某スーパーDrがマスコミでもてはやされました時期には、気分を害した患者さんから土下座をしろと強要されたこともありました。

そして救急医療では、いくら疲弊をしていてもそんなことは医師なんだからあたり前だったのかもしれません。

医療崩壊が危ぶまれ始めた時、それでも医師に対しての世間の厳しい目は続きました。救急のたらいまわしがおきたときもまずは医師の診断拒否や怠慢という人々の批判感情もあったのでしょう。

どこに訴えても非難される雰囲気の中で、精神的、体力的に疲弊をした医師が、無言の退職をしてしまう立ち去り型サボタージュという現象もおこりました。

しかし最近では、医師を含む医療関係者に対する風当たりが急に優しくなったように感じます。

多くの医療のドキュメンタリーやドラマが放映され医療現場の実情への理解が浸透してきたからかもしれません。名医として医療を解説するマスコミで大活躍の方も数多くでてきました。

海外の医療を応援するニュースも報道されるようになってきました。医療スタッフへの感謝を示すCMも時折目にします。

無給の研修医の問題も解消され、予算がつきました。徐々にではありますが当直明けの休みなど勤務時間の短縮もでてきました。

偉そうから、可哀そうという評価もでてきたのかもしれませんね。

もちろん医師だから特別によい待遇である必要はありませんが、医師だから我慢しろと非難する必要もないのだと思います。

いわれてみると医療のみならず時代に伴う評価の変化というというのはあるのでしょう。過去の反省をもとにその後にはその反対の方向に強くふれるということもあるのかもしれません。

教育では、昔は先生が偉くて強かったが、今は生徒のほうが強い。

会社では、上司のいうことが絶対だが、今は部下の機嫌をとるのが絶対。

昔は女性が我慢していたが、今は男性が我慢すべき。

などなどいわれてみるといろいろ分野でも見られます。

それぞれの時代において違った意見があり、それに応じた雰囲気があるのでしょう。振り子のようにバランスをとりながら、少しずつは多くの人が納得するよい方向に向かっているような気もしてきます。

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