院長コラム
Column

倍返し

2020年10月02日

銀行の内幕を描いた「半沢直樹」のドラマが人気です。7年前の前作は平成で一番の視聴率のドラマであり、第2弾である今回は令和での一番の視聴率のドラマとなりました。

やられたらやり返すの倍返しが決まり文句です。多くの人がそのドラマの内容に共感し、その爽快感を感じているのでしょう。

第2弾の終盤では倍返しが進展して千倍返しにまでなりました。

私も前作および今回の作品を通して視聴しました。確かにセリフや状況に迫力があるので見入ってしまいますね。

第1弾では銀行の内情をデリケートに描写されていたように思いますが、今回の第2弾はついていけない位の速い展開と歌舞伎ばりの絶叫の連続です。

みんながいってほしいことをよくぞいったの拍手喝采はまさに歌舞伎のイメージです。悪いやつに反撃して懲らしめるというのは時代劇の遠山の金さんや水戸黄門の決まり文句にも重なります。

正義を貫き、「弱気をたすけ強きをくじく」というのはいつの時代においても多くの人が共感するキーワードなのだとあらためて感じます。

ドラマのキャラクターをものまねする芸人の方も多数おられるようなので、年末の娯楽番組でもこのドラマのキャラクターは大活躍しそうですね。

私もドラマの影響なのか、最近では悪いことをしている人を懲らしめる倍返し系のUチューブのコンテンツを視聴してしまいます。検索すると沢山でてきますよ。

ケンカ自慢のプロ格闘家がぼったくりバーに騙されたふりをして潜入して請求されたお金を取り返すとか、弁護士さんが悪徳架空請求業者を理詰めでたたきのめすとかなどなど。

大阪みなみのぼったくりバーでは、ビール一杯13-15万円位が相場のようですね。

改めて考えてみるとドラマの世界だけではなく、現実の会社や組織の中で働くことは不条理を多く感じるものです。

サラリーマンと呼ばれる会社員や大きな組織で働く多くの人はぐっと我慢をしているのでしょう。歯を食いしばって働きつづけていることだけでも褒めたたえてあげてほしい気持ちにもなります。

期待をしていなければ腹もたたないので、組織や社会をよくしたいと真剣に思えば思うほどいろいろと不満もでてくるのでしょう。

私自身もよかれと思って行ったことが、報われないばかりか裏目にでて苦しむということはなんども経験しました。もちろん私の場合、自らの未熟さが原因ですが。

自らの不遇についてぶつぶつと愚痴をこぼしていたところ、妻から「あんたのようなことをいっていたら会社員やったらすぐ首やわ」といわれたことも思い出します。

おそらく私が会社に勤めていたら、うまく適応できずに干されていたのかもしれません。改めてクリニックで自分の居場所を確保できていることに感謝です。

また、このドラマは中国でも人気のようで、多くの人が視聴しているそうです。

しかし、多くの中国人は、不条理でストレスにあふれた会社でなぜ半沢直樹さんが仕事をつづけているのかはわかりにくいようで、ある意味日本人と違った奇異な目で視聴しているそうです。

そんなに不条理に苦しむのならさっさと転職すればいいのにと、ある意味シンプルで現代的な反応です。

ドラマでは「貸すも親切、貸さぬも親切」という一流のバンカーとしての大切な格言がありました。

たとえ担保が十分であり、高い利息が得られたとしても不健全なお金は貸さない。 貸したお金が役に立ち、感謝されて返ってくるような、生きたお金を貸さなければならないということです。

不条理に立ち向かうにはストレスもあり多大なエネルギーが必要です。無理に仕事を頑張りすぎて心や体を壊してしまってはもともこもありません。

辞めるも親切、辞めぬも親切。仕事を辞めるも続けるも、自らの正義を貫き納得すればどちらでもよいような気もします。

半沢直樹の奥さんの「仕事なんかなくなったって、生きてればなんとかなる!」との名言もありました。

そして憎しみの倍返しではなく、感謝の恩返しのほうががいいのでしょう。必ず我が身に返ってくるのですから。

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