院長コラム
Column
人はどこからきてどこへ
2020年11月16日
昔、「はじめ人間ギャートルズ」という原始時代の家族を描くアニメ番組があり、子供の頃によくみていました。マンモスの狩りをしながらほとんど肉ばかり食べて生活していました。
教科書でも北京原人やジャワ原人などの旧人類が各地域にいたことを知り、当時勝手に日本人は北京原人に由来するものだと思っていましたが、それではなく、滅びてしまったようです。
ホモサピエンスといわれる人型哺乳類は多くの戦いを繰り返しながら、繁栄滅亡を繰り返してきたとされています。
ヒトの祖先がチンパンジーと分枝したのがおよそ200万-1000万年前、ホモサピエンスが分枝したのが20万-180万年まえと推測されています。
もちろん昔のことはわからないことも多いので、専門家の中でも未だいくつかの説がわかれているようです。
現生のすべての人類の祖先はクロマニヨン人であるとされています。クロマニヨン人が他の地域に散らばるホモサピエンスを凌駕、排除したということもいえるのでしょう。
クロマニヨン人はアフリカに起源をもちます。アフリカは暑い場所なのでかなり以前から体毛が少なかったのかもしれませんね。
持久力をもってマンモスを追いかけるには体毛は薄く、その上に毛皮をきるというほうが体温管理の上でお有利だったとされています。
アフリカ大陸からユーラシア大陸に移動をし、まず中央アジアにあたりに居住を示します。
確かに中東あたりの人の顔をみると、白人、黒人、黄色人の丁度中間の顔つきです。
そこからアジアの方に移動する人、北の方に移動しヨーロッパの方に移動する人などに分散しました。
ヨーロッパの人が白い肌をもっているのは、ロシアの寒い北側を経由したからかもしれません。白い肌は日の光が少ない場所で、効率よく紫外線を取り込むのに有利とされるからです。
クロマニヨン人がユーラシア大陸に移動する前、すでに別の亜種であるネアンデルタール人が各地域に居住していました。
ネアンデルタール人は50万年ほど前に分枝し、6万年前に滅亡したとされます。
ネアンデルタール人は堀の深い顔つきで、クロマニヨン人よりは身長はやや低いももの筋肉量は30%も多く力持ちでした。一対一で戦った場合はネアンデルタールの方が強かったのでしょう。
しかしながらネアンデルタール人はクロマニヨン人に滅ぼされてしまいました。なぜなのでしょう。
ネアンデルタール人は肉食のみで狩りをする少人数の生活をしていたのに対し、クロマニヨン人は肉食以外の雑食も取り入れた、より大きな集団生活を始めた、矢などの飛び道具を戦いに取り入れたなどの理由が挙げられています。
しかし敵同士で戦いはつづいていたものの一部の地域ではクロマニヨン人とネアンデルタール人の交配はありました。
東アジアに住んでいる我々はほとんどネアンデルタール人のDNAはほとんどひきついでいないのに対して、ヨーロッパや南アジアの人では10%~50%の頻度でそのDNAの一部をひきついでいるそうです。
南アジア以西の人は堀の深い顔つきなのに対して、東アジアの人は平面的なのはそのためかもと想像してしまいます。
以前になぜ日本人などの東アジアの人が欧米の人より新型コロナウイルスに感染しても重症化しないのか?ということについて書きました(2020年5月25日分)。
もちろん様々な説があり、わからないことが多いのが現状です。
最近、科学雑誌のNatureでは、ネアンデルタール人から引きついたDNAの遺伝子多型を引き継いでいる人では新型コロナ感染をした時に重症化しやすいことが掲載されました。
詳細な機序は不明ですが、なにかしらのウイルス感染した時の免疫反応の差に影響しているのかもしれません。
確かに東アジアの人と欧米の人では、薬の反応、用量、出血や血栓の頻度など、医学的にも様々な差異が見られます。
新型コロナウイルスはその蔓延により海外との交流はもとより各地の交流を遮断しました。しかし、来年の収束以降はまた世界は元の状態にもどり、どんどん世界との交流が今にもまして各地域への移動がすすんでいくのでしょう。
数百年後には人類は同じような顔つきになり、それぞれの地域の体質の差というものもどんどんなくなってくるような気もしてきます。