院長コラム
Column
コロナ感染へのさまざまな視点
2020年12月14日
コロナ感染者も急増し、重症患者の数も増加しています。大阪のコロナ関連の重症病棟のベッドの多くがうまり、逼迫の状態です。病院での集団感染も発生し、うまく機能しなくなってきていそうです。
再び緊急事態宣言も出そうな気配です。
重症者の数が用意されたベッドの数をこえて溢れると、救うべき人をきっちり治療できない医療の崩壊につながるため、最近ではまずは重症者の数を提示する報道も増えてきました。
コロナ患者さんをきっちりと管理するには気を遣うことが極端に増えることから仕事量が増えてきます。そのためますます人手がたりなくなります。
自らすすんで治療に携わる医療関係者であっても、家族の方からみるとコロナ対応をすることは子供や年老いた親のことを考えるとできればコロナには携わらないでほしいという思いもでてくるのでしょう。それを理由にコロナの治療現場から離れる方も少なからず増えているとききます。
大阪ではコロナ治療への人手不足から他県や自衛隊への救援の要請中です。
多くの感染の専門家や医師会では、感染予防のために都市の外出の禁止や自粛を強く要請しています。
病気をしっかり管理して最善をつくすという医療側の立場なら、多くの経済活動や行動を自粛すべきであるという意見となるのでしょう。そう言わざるをえなということもあるのかもしれません。
しかし、一方では経済あっての医療という考えも当然あります。経済の状態がよくなければ医療のコストも負担することができないですし、その苦境からの自殺も増えてしまうという実情もあります。
去年に比べて出産予定の人も3割程度は減少しているそうです。今の時代、経済がよくなければ人口も減少するのでしょう
病院の対応についてもコロナへの対応・治療法にはさまざまな意見があります。
コロナ関連によるリスクを全力で排除し、対応しないと絶対にだめという方針ならば他の入院患者へのしわ寄せも絶大なものになりそうですし、その労力も甚大です。
感染した人はもちろんのこと接触した人もすべて隔離する必要もでてくるのでしょう。
一方、多くの人にとってコロナ感染は風邪の延長のようなものだとすると、重症化のリスクの高い高齢者や基礎疾患をもった方に対してだけに注意を払うという考えもあります。
確かに東アジアの黄色人種にとっては、欧米諸国と違って当初危惧されたように重症化する人は多くないといわれています。インフルエンザと変わらないという意見もあります。
感染の専門家や現場の医師の中でもコロナ感染への対応への意見は様々です。
集中治療室に入るような重症化して亡くなる人は感染した人の氷山の一角で、実は軽症でも亡くなる高齢の方がたくさんいるため、もっとコロナへの集中治療をしっかりしていかないといけないという意見があります。
一方では、高齢者ではもとより肺炎による死因が高く、そもそも重症化した人をすべて集中治療室で治療してきたのか?そもそも本人や家族が人生の最後に助かる見込みの高くない苦しい治療を希望しているのか?という意見もあります。
おそらくそれぞれの立場によっても意見は違うのでしょう。
経済的に余裕のある人は、経済優先の政策は許せないといい、コロナによる経済的なダメージから生活に困窮している人は、経済政策は大切だというのかもしれません。
当院に来院される患者さんは大阪みなみの自営業者の方もおられますので、不況による苦境や失業なども心配です。
実際コロナ不況で仕事をなくし、当院への通院や服薬の継続ができなくなってしまった方もでてきています。年末、年始にかけて不況がつづけば治療を続けることができなくなる方もいるのです。
要求すれば人やお金がどんどん増えるわけではないので、いずれにしても限られた資源の中で知恵を絞る必要があります。
自分の立場や意図に沿わない目の前の現状やその対策を批判するだけではなく、どのようにすれば社会全体の損失を少なくできるのかという視点も必要なのでしょう。
そして、いずれの立場でもそれを共有し、お互いに協力しあう姿勢も大切なのだと感じてしまいます。