院長コラム
Column

スマートウォッチと健康管理

2021年02月18日

以前、身の回りでのアップルウォッチの便利さについては以前のコラムでも書きました(2018年4月4日分)。それからも体のモニター機能もどんどん進化して健康維持・病気の予防においてもとても便利になってきました。

クリニックの外来でも時折、スマートウォッチのデータについて相談をされる患者さんもおられます。

今使っている私のアップルウッチはクリニック開業当初から使用している旧型のものですが、最新型では新たに心電図記録機能が使えるようになったようです。ある意味革新的なのだと思います。

心電図においては少々の混乱もあるかもしれないので簡単に概説します。

心電図波形を記録するためには記録媒体(時計)が心臓を挟む2点をはさむ必要があるので、時計をつけていない右手で時計に触れる必要があります。ウォッチを左右の手で結ぶことにより心臓を挟むという原理です。

ずっと右手で時計をさわっておくことはできないので気になる症状があった時だけに心電図波形を記録するイベントモニターと同じようなイメージでしょうか。

心室や心房からのそれぞれの波形も記録できるので、ある程度は診断もすることができます。

異常な波形があればもちろん自動診断して通知してくれます。

しかしながら微妙な心電図の変化などは検出できないので、その重症度を評価するためには最終的には専門の長時間心電図や12誘導心電図による再度の確認が必要です。

一方、心拍数、心臓のリズム、その変化は脈波を記録することにより持続的にモニター記録することは可能性です。

心拍数の変化から不整脈の診断をするアルゴリズムは、従来からペースメーカーや植え込み型の除細動器でも使われています。心拍のリズムの変化から不整脈の診断をするノウハウは以前からの蓄積があるので、医学的な裏付けはあります。

よくみられる不整脈の中では、心房細動が心不全や脳梗塞の原因となりますので最も注意が必要なのだと思います。

アップル社は欧米の有名大学と共同で臨床研究を行い、そのデータを解析した結果は有名な医学雑誌でも掲載されています。今後もそのデータを活用することによりいろいろな医学的な知見も実証されていきそうです。

アップルウォッチの通信機能をつかうことにより数十万人規模のデータは個々のデバイスからすぐに集めることができるからです。

数年後にはアップルウォッチをつけている人は、心不全や脳梗塞を予防することができ、長生きができるという結果がでてくるのではないかという気もしてきます。

心臓のモニター機能以外にも、酸素飽和度のモニター機能もありますし、コロナ禍では重症度の評価にも有用そうです。もう少しすると血糖をモニターする機能も追加される予定なのだとか。

転倒して意識を失った時には救急車を呼んでくれます。

またアップルウォッチは一日の歩数、体動による運動時間、立位の時間を持続的に記録してくれているので、個人的にも健康管理には役立っているような気もします。一日の目標歩数の達成率などさまざまな角度から検討し、アドバイスしてくれます。

診察中にずっと座っている状態がつづくと、そろそろ立ってはどうですか?とか深呼吸してはどうですが?という振動付きのメッセージをくれます。

今のところ比較的若年の方が使用しているのだと思います。宣伝しているわけではないですが、これからの高齢社会ではご年配の方においてより重要なデバイスなってくる気もしてきます。

そして異常な波形がでていて気になるようでしたら、不整脈をチェックするために不整脈・循環器外来を受診いただくのがよさそうです。

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