院長コラム
Column

デジタル病とアナログ病

2021年03月22日

病気にはデジタル病とアナログ病があるのだと思います。

病院やクリニックでは調子が悪い時に血液検査・生理検査。レントゲン検査などを行います。西洋医学では、病気を客観的に評価できるように具体的に数値化して病状を評価します。

デジタル病とは病状が具体的な数値により評価できる病気のことです。

日常の診察では、血圧、血液検査の結果などがまず思いつきます。生活指導をしても血圧が高いままだと降圧薬をだしますし、血液検査でコレステロールや血糖がたかければそれを低下される薬を処方します。

客観的なデータがでるので分かりやすいですし、そのメカニズムを考察することは科学的という解釈もあるのだと思います。

そして、もとの病気や年齢にもとづいてどのくらいの程度まで下げるのがよいかなど多くのエビデンスがあり、ガイドラインも作成されています。

日本の医学教育では、医師はまず西洋医学を学びます。もちろん、私自身も西洋医学のトレーニングを受けてきました。

異常な数値や検査所見をみて治療するのが、西洋医学の特徴です。デジタル病には西洋薬というのが相性よさそうです。

特に循環器の領域では、ほとんどの先生は西洋薬をまず使用します。循環器の病気はデジタル信号が多いからです。そして客観的に予後を改善する西洋薬が数多く証明されているからです。

一方、なんとなく調子がわるい、動悸がする、息切れがする、お腹の調子が悪いなどなど、数値で表すことのできない病状もあります。

自律神経やホルモンの不調による場合も多そうですし、体内のバランスがくずれているのでしょう。

その時には漢方薬もよさそうです。体の足りないところを補うことにより中庸をめざしてバランスをとるという東洋の治療です。

つまり、数値で表すことのできない症状だけのアナログ病には漢方ということなのでしょう。

弱った木に水をかけて治すのが西洋医学、森全体のバランスよくして木を治すのが漢方医療というイメージでしょうか。

薬が飲めない人でも漢方薬であれば服薬できるという体へのやさしさもあります。ホルモンのバランスということでは更年期の方にも有効そうです。

循環器疾患の中でも特に不整脈は、自律神経や心因的な影響もつよくアナログ成分が多分に認められる領域だと思います。

こと動悸を自覚されて受診された場合、実際に問題となる不整脈がみられるのは半分未満でしょうか。

以前の病院での勤務医時代、検査をしてデジタル部分に問題なければ治療はせずに様子観察。どうしても症状が気になってしかたがない場合には、抗不安薬を投与するということをしていました。

多くの循環器専門の先生はそのように対応されているのだと思います。

しかし、それでもなんとかしてほしいと患者さんが納得せず不満を持たれるときがしばしばあることにも気づきました。

アナログ症状に対しても漢方を取り入れて勉強してみようと思いたったのはそのためです。

ツボにはまれば漢方は西洋薬では解決できない症状によく効きそうです。循環器では珍しい方かもしれません。

循環器の異常を感じて異常なデジタル所見があればまずは西洋薬を考慮します。しかし、それでは解決できないアナログ病に対しては漢方薬も有効です。

ホームページにも書きましたように、西洋薬と漢方薬との相補的な薬物治療の意義は循環器領域においても高いのだと感じています。

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