院長コラム
Column

川の流れのように

2021年06月23日

自分が何になりたいかということはなかなかわからないものです。またわかっていても描いたとおりの思い通りにはならないこともよくあることです。

特に若い時代には、これからの人生についてどうすべきかと悩み苦しんでいる人も多いのでしょう。

現状に満足できていない場合、別の道があるのではと自分探しの旅を繰り返している人もいるのでしょう。

また、理想と現実のギャップのために元気をなくし病気を引き起こしてしまう人もいるのかもしれません。

自分がどのようになるかは、周りの環境や人との巡り合いによってもかわってきそうです。

自分で決めた理想だけではなく、たまたまの縁の積み重ねということもあるのでしょう。

いざ自分のことを振り返ってみてもいろいろな迷いはありました。

こと仕事に関しては、比較的はやいうちに医師をえらぶことになりましたので、周りの人からは進路で悩む必要がなかったのではといわれたこともありました。

しかし、かならずしもそうではないような気もします。また専門によっても歩む道はかなり違ってきそうです。

少し振り返ってみると、まず私が循環器内科をえらんだのは、血液は全身に回っているので全体的な病気の管理をできるのではということでした。そして、患者さんに近い立場で医療を行いたいということもありました。

循環器内科として働き始めましたが、実際は検査中心の専門内科であり、思い描いていたものとはかなり違いました。

そして、あまりにも厳しい労働環境で自分には向いていないのではと思いなやんだ時もありました。しかし途中でなげだすのが悔しくてなんとか持ちこらえたということだったように感じます。

不整脈治療を専門にするのも自らが希望したわけではなくたまたま周りにやる人がいなかったからです。他の人のために頑張ってくれという感じでした。

不整脈は循環器の中でもかなり専門に入りこんだ領域です。

全身管理をしたいと思っていたはずなのに、気が付けばかなりのニッチな専門の道に流されて入り込んでいたという感じでしょうか。

しかし、流されながらもやりだすとだんだん楽しくなってくるというのはあるように思います。

医師のキャリアとしては、教授職や基幹病院の管理職などへのいわゆる出世の道をすすむことに魅力を感じる人も多いのかもしれませんが、理想通りにはならない時もあります。

自分の実力だけでなく、相性がいいか、たまたま場所が空いていたかなどいわゆる運と巡り合わせもありそうです。これは大きな会社や組織でも当てはまることなのでしょう。

人により価値観は様々ですが、個人的には権威や名誉をめざす競争の路には心の安住はないのだと感じてしまいます。

そんなこんなで、いい歳になってからでも初心にもどりクリニックを始めることを決めたということもあります。

そして、いままでの臨床経験を考慮し、循環器・不整脈の専門クリニックを目指すことにしました。

「川の流れのように」というのは亡き美空ひばりさんが「自分から遠い若い世代の人たちにメッセージを残したい」との思いから作られた30年以上前に作られた大ヒットした歌です。

今でも多くの人の心に残る名曲だとおもいます。私もたまに鼻歌で歌っているときもあります。

「水の流れがあっちにぶつかり、こっちに突き当たりしながらだんだん大きくなる。」様の描写はある意味人生にも例えられ、多くの人が共感するのでしょう。

若い時代、人に流されるだけなのは嫌で素直にこの歌に同意したくないと思っていました。

しかし今振り返ると、それでいいのだとも感じています。

川の流れにまかせるように日々を楽しみながら修練を積み、流れ着いた先のたまたま景色のいい場所に自らの居を築き、そこで縁のある人と羽を広げ、ともに努力をするということでいいような気もします。

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