院長コラム
Column

先への投資

2022年07月26日

高血圧などの生活習慣病を管理・治療するということは、将来元気で健全な状態をできるだけつづけるためです。

生活習慣を改善してきっちりと薬を服用することにより、のちのちの動脈硬化を予防し、さらには脳梗塞や心不全をおきないようにしましょう。後の認知力の維持にも大切そうです。

また、不摂生をつづけていると循環器病ならず癌の出現頻度もふえてきます。

日常生活を管理・改善することは、今をすこしだけ自制して先への投資をしましょう、ということなのだと思います。

日常の診察では、かかる患者さんへ生活習慣、体重管理、運動、食事のことなど、決まり文句のように生活を指導します。

しかし、言うは簡単ですが、それを継続しつづけることは容易いものではありません。

「わかっているけどおいしいものはやめられない」、「逆にだんだんと太ってきました」、「薬の服用は結構忘れてします」などなど、うまく守れていない方もちらほら。

もちろんその気持ちもよくわかります。

いざ自分のことを振り返ってみても、私自身きっちり生活管理できているのか?と自問自答しても全く自信なしです。

私自身も血圧とコレステロールは少し高めですので、もう少しの日々の節制が必要そうです。

年々少しずつ大きくなってくるお腹周りの浮き輪をみるにつけ、お前がいうなと自分をツッコミたくなる時もあります。

多くの医師も自らのことはさておき、少々自分に甘いスタイルで診察しているのでしょうか?

きっちりと節制されている患者さんへは、本当に敬意を表します。

しかし、普段はきっちりしている方でも、一時の気の緩みによりリバウンドして元通りということもありそうですので油断は禁物です。

将来のためだけに、今の生活を犠牲にしてずっと我慢しましょうということは、どうしても長続きしないのかもしれません。

いざ世の中のことを考えてみても、当てはまりそうなことがいろいろあることにも気づかされます。

日本の借金はどんどん膨れあがって近い将来には財政破綻しそうな雲行きです。しかし、将来のために借金をへらしましょうと財政再建を提案しても必ず選挙では敗北します。

将来の地球温暖化対策、地震、台風などの致命的な天災にも当てはまりそうです。

「将来のことはようようわかってまっけど、まずは今の生活でんがな」という本音が心の声として聞こえてきそうです。

気が付けば安易なほうに流されていくのは人間だからしかたがないのでしょう。

おそらく現在の習慣を先への幸せへと繋げていくしくみも必要なのでしょう。今の楽しみが気がつけば先への投資となればよさそうです。

こと健康ということでは、

お腹の筋肉がついてきてそれをみるだけで気持ちが上向く、スマートになってかっこいいといわれた、元気で若々しいといわれる時が増えた、生活習慣を改善したら体が軽くなって気持ちがいい、体調がよくない時でも運動した後には調子がよくなる、などの楽しみを今の生活で見つけ出すこともよさそうです。

さらには何が先への投資へのつながるのかということを適宜整理することも必要なのかもしれません。

そして、臨床医とは完璧な理想医療を強制するだけではなく、少しでもよい方向にうまく導いていくことも大切な仕事なのだと気づかされます。

 

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