院長コラム
Column

長寿と糖尿病

2017年06月26日

 

長寿の方の特徴としては糖尿病ではないということは大切で、これは各国共通した特徴とされています。長生き家系の方は、糖尿病をはじめとした心臓血管系のリスクが少ないという特徴があり、循環器系の老化と寿命は密接に関係します。

血糖の値は「インスリン」というホルモンにより調節されています。食後などに血糖が高くなった場合、それを感知して膵臓から「インスリン」が放出されます。「インスリン」はさまざまな組織に作用し、血液内の糖分を組織の細胞内に吸収させることにより適切なレベルに血糖の値を調節しています。

そのため血糖がずっと高くなるとそれに応じて「インスリン」のレベルも高くなります。しかし「インスリン」のレベルが高い状態がずっと続くと、「インスリン」組織の感受性が悪くなり血糖を下げる反応が鈍くなってきます。糖尿病にもいくつかのタイプがありますが、肥満や生活習慣病のある中年以降の方は、「インスリン」レベルが高いにもかかわらず組織での「インスリン」への感受性が悪くなっていることが糖尿病の進行の原因になる場合が多くなります。

血糖が高いことも動脈硬化を促進させますが、「インスリン」のレベルが高いことも問題となります。「インスリン」は成長因子としての作用もあり、動脈硬化や癌の発生を成長・増加させるため、糖尿病の患者さんでは、循環器病や癌の発生率が高くなると考えられます。

「インスリン」の感受性を改善させるメトホルミンという糖尿病の治療薬があります。マウスに投与することにより40%も長生きすると報告されています。人に対しても寿命を延長させる効果が期待され、現在海外では、この長寿効果を検証する大規模の臨床試験が進行しています。もしかしたら糖尿病以外の方にも有効かもしれません。

昔の糖尿病の治療は「インスリン」をどんどん出させる薬をよく使用していました。しかしながら、現在は「インスリン」をどんどん出させないでその作用の感受性を改善させる薬を使用する方向へと変わってきています。

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