院長コラム
Column
このままで大丈夫?
2025年04月28日
近年、国の医療費抑制策として、医療制度の大きな変化が進んでいます。
診療報酬の引き下げや新たな制度の導入も相次いでいます。その影響は、私たち医療従事者だけでなく、患者さんの健康にも関わる大きな問題です。
高齢化に加え、急な新薬や材料費の高騰などによる医療費の増大が維持できなくなってきているため、そのほころびはこれから様々なところでおきつつあります。
医療を取り巻く状況が急に変化しているにも関わらず、一般的にはそのことがあまり知られていないのかもしれません。
しかし、多くの医療機関にとって根幹を揺るがす大きな問題となりつつあります。
まるで、水位が下がる池のように、私たちの足元は徐々に、しかし確実に浸食されているということでしょうか。
全国の病院の約7割が赤字経営に苦しんでいるという厳しい現実です。それはこの数年でも悪化しつつあり、存続の危機に瀕しつつあるのです。
私の知る範囲でも、「数年後には閉院も考えないと」と長年地域医療を支えてきた先生が増えているような気もします。
このままでは病院やクリニックが目の前から急になくなるということも増えてきそうな気配です。このままでは、これまでのようにすぐに自由な医療機関を受診できなくなるかもしれません。
ここ中央区などの都心では、どうしても家賃などの維持費が高くなりますし、都心の開業規制や地方よりも診療報酬を減額するという世知辛いうわさもあります。
それにもかかわらず、次回の診療報酬改定ではさらに減額予定とのうわさです。そしてどんどん業務だけが増えているという感じしょうか。
まずは根本的には国の財政事情が原因なのでしょう。
しかし、そのしわ寄せが医療現場に一方的に押し付けられ、長期間で徐々に変化していくべきことが数年の間に成果をあげようという力が働いているようにも感じてしまいます。
社会のインフラである医療が急に劣化し、その影響は気が付けばいずれ多くの人の生活にも及んでくるのではとも危惧してしまいます。
誠実な医療をすれば立ち行かないという時代になりつつあるのでしょうか?
そして「悪貨は良貨を駆逐する」という Gresham の法則にも似た現象が起こらないことも願ってしまいます。
古い昔の時代の羽振りのいいイメージをもとに医者(特に開業医)だけを悪者にして、その報酬をへらせば敵を倒せるのだという、いわゆるポピュリズム的な発想で解決する問題ではないと思います。
これからの時代の医療がどうあるべきかを考え、そのための創意工夫が必要なのでしょう。