院長コラム
Column

心電図を長時間とる意味とは

2017年08月21日

長時間心電図とは、一般的には24時間(ホルター)心電図のことをいい、一日心電図をつけたままにして、心臓の電気的な活動を評価する検査です。

一日心電図をつけてみましょうというと、多くの患者さんはかなり嫌がられる時も多いのですが、とても大切な検査です。

安静時につける12誘導心電図にくらべ、つける電極の数は少なくなるため評価できる情報は少しシンプルになりますが、どのような不整脈がどれくらいの頻度ででているか?症状がでているときの波形はどうか?狭心症などの心臓の血流の異常による波形の変化はないかなどの情報を得ることができます。しらないうちにもいろいろなことが起こっている場合があるのです。

特に不整脈の診断ということ関しては、多くの情報を得ることができる検査になりますので、不整脈を疑う場合には、必ず長時間心電図をとって評価しておくほうがいいようにも思います。ここは不整脈について少し話をすすめていきます。

不整脈の症状は動悸、ふらつき、息切れなどの症状が一般的です。脈が速くなったり、脈が飛ぶと動悸の原因になりますし、逆に遅いと息切れ、ふらつきの原因になります。不整脈がでると血圧が変動しますのでふらつきもでてきます。

しかし、症状の感じ方は人によりさまざまです。神経質な人は脈が一回飛ぶだけでも気になりますし、かなり重症な不整脈があるにも関わらず全く症状のない人もおられます。不整脈があっても症状として自覚される方はおそらく半分くらいだと思います。

長時間に不整脈を詳しく調べれば少しは誰でも認められるものですので、すべて治療の対象になるわけではなく、ほっておいてもいい場合も多いです。しかし症状が強い場合や軽ほうっておくとリスクの高い不整脈が見られた場合は積極的に治療する必要がでてきます。

一般的には記録された不整脈の頻度や時間がおおいと心臓に負担がかかり、さらにどんどんと増えていくという悪循環がでてきますので治療をする必要性が高くなります。

一方、動悸は精神的な状態とも密接です。心因的な背景に不安がある場合が多いのでしっかり検査をしておくことは意義があります。異常がなかったとしても安心につながりその後は症状が気にならないことも多いです。

不整脈ではなく心臓の機能が正常にもかかわらず、それでも動悸の症状を自覚される時、自律神経やホルモンなどが不安定になっていることが原因の場合があります。これらをひっくるめて心臓神経症という病名もあります。症状がどうしても気になる時は、しばらくの軽い安定剤や漢方処方でバランスをとることが病状の改善に有効です。更年期の症状を反映している場合もあります。

症状がなくとも、ほっておけない不整脈としてはまず心房細動が挙げられます。症状の有無にかかわらず脳梗塞や心不全の原因になります。高齢、心不全、高血圧、糖尿病などの動脈硬化のリスクが高い患者さんでは、知らないうちに心房細動がでている場合も多く、また出ていると脳梗塞のリスクが高くなります。脳梗塞のリスクの高い方は長時間の心電図を受けたほうがいいのだと思います。

失神や原因不明の脳梗塞を起こした時、繰り返し同じことが起こると大きな事故につながると困りますので、しっかり評価しておく必要があります。頻度がすくなければ24時間のみの記録では不十分な場合もあります。ほっておくと心配な不整脈は、診断だけはつけておく必要があるので、当院では1週間の心電図、イベントリコーダーなどにより詳細に不整脈を評価する努力をしています。

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