院長コラム
Column
自信を取り戻す
2018年05月26日
マレーシアの首相に92歳のマハティールさんが任命されたことを新聞の記事で知りました。昔も20年間位首相を務められていましたので、久しぶりの再任です。ひと昔ではありえないような高齢での就任ですので、まさにこれからの人生100歳時代を象徴しているような気もしてきます。
細かいところまで目を光らせるということではなく、精神的な支柱となるカリスマ性を期待されての登板なのかもしれませんね。
マハティールさんは親日家としても有名です。もとは医師の資格ももたれ、医院を開業した後に政治の世界へ転身されました。息子さんは日本の大学に入り勉強されたそうです。
戦後すべて失った日本が懸命に復興していく姿に強く感銘をうけ、マレーシアの国もそのようにあってほしいと強く感じたそうです。
以前の首相在任時には、「ルック・イースト」という政策を前面にだし、日本を見習い、日本のような国になりたいというメッセージをだされました。
隣国で日本のことを思い、親身になって応援してくれる国もすくないのかもしれませんので貴重な存在です。
日本は東洋の奇跡ともいわれる戦後の復興をへて、経済的も裕福になりました。しかし、彼の目には最近の日本人の姿は自信をなくしているように映るようです。
勤勉で真面目な性質をもち、昔ながらのすばらしい日本独自の精神的な文化があるのに、自信をなくし欧米の考え方に振り回されて右往左往している姿は不思議だというコメントをされています。
そして日本の若い人に対して、国を愛すること、自信をもつこと、戦後の苦境を乗り越えた日本人には素晴らしい資質が秘めているのだという彼からの励ましの言葉もあります。
今の時代、愛国心という言葉は賛否両論なのだと思いますが、自ら誇りをもち、自信をもつということはとても大切なことなのだと感じます。
数年前に他界されたマハティールさんの盟友といわれたシンガポール建国の父といわれる初代首相のリー・クアンユーさんも日本のような発展を目指し長い間強い指導力をもってシンガポールの国づくりをされました。
マレーシアから独立した当時はとても貧しい小国でしたが、現在では日本の平均所得の1.5倍で、一人あたりのGDPは日本の5倍にあたるほど生産性の高い豊かな国になりました。
リー氏曰く、最近の日本の一番の問題点はどのような国になりたいか?という目的を見失なっていることだということです。
確かにいつも見えない空気に支配され、いつもその場の雰囲気に気をつかいながらコメントをされている有識者、国のリーダーの姿やマスコミの報道をみると、この国はどうなるべきかという目的を見失いさまよっているような気もしてきます。
目的を見失っているから、自信をもてないということもあるかもしれません。
なんとか自信をとりもどしてこの国の将来の不安をなくしていきたいものです。
しかし自らのことを客観的に理解するのは本当に難しいことです。少し離れた立場からの良心ある隣人からのアドバイスはとても貴重です。
そして他人からの意見は図星であればあるほどいやな気もしますが、そこはぐっとこらえて聞く耳をもつということも必要なのだと思います。
いざ診療を振り返ってみても、同じようなことはありそうです。
日常の診療でも、患者さん自身、どのようにありたいのか、どのようにしてほしいのか?ということが明確でないのではと感じる時も時折感じます。
多くの医療情報がとびかう時代ですし、逆に混乱し不安になっている時もあるのかもしれません。
現在苦しんでいる病気の問題点は何か?治療の目的は何か?などを適宜整理し、確認しておくことは、不必要な不安をなくし自信にもつながりそうです。
自分の意図に沿わないこともあるのかもしれません。耳の痛いことを受け入れるには勇気はいることですが、少し冷静になり耳を傾け歩み寄るという姿勢も、私と患者さんにとってお互いに必要なことだと感じます。