院長コラム
Column

不整脈は自律神経の変動から

2018年06月09日

自律神経の状態が変動すると脈がはやくなったり遅くなったりするので、どきどきするなどの動悸を自覚する時があります。これは日常の生活でもおこる正常な反応ですが、極端な自律神経の興奮とその変動は不整脈の発生に密接に関係します。

自律神経は交感神経と副交感神経からなりますが、そのいずれが活性化しても、不整脈が起こりやすくなります。具体的には心臓の筋肉から異常な電気が発生しやすくなる、心臓自体の筋肉が早い異常な電気信号に反応しやすくなるなどの現象が起きるためです。

そして生理的な反応であっても急に脈がはやくなったり、遅くなったりすること自体も不整脈を出やすくしてしまうのです。

日常生活では夜間の排尿時や運動時などに不整脈の発作がよくおきます。

排尿行為は自律神経の活動により調節されているため自律神経の調整が急に変動しやすいからです。

急激な運動時とその直後も自律神経が興奮・変動します。

ハードなトレーニングをするスポーツ選手も不整脈がおきやすく、例えばマラソン選手がレース中に急に脱落するのはその時に不整脈が出現していることも多いのです。

代表的な不整脈である心房細動についてもカテーテル治療をする時にも自律神経がいかに不整脈の発生と関係しているかということを伺い知ることができます。

治療中での私自身の経験と調査したデータをまとめていますので、いくつか記載しておきます。

まず心房細動を誘発する時には交感神経を刺激する薬を使用します。交感神経の興奮に引き続く副交感神経の興奮をきっかけに出現する時が多いのです。

どのような状況で心房細動が出現するのかということに興味があったので調査してみました。いろいろな薬を使用したり、電気の信号をおくりこんだりするなどいろいろ条件を変えて調べましたが、交感神経を興奮させる薬を高用量に使用すると誘発されるときが多いという結果でした。

そして心房細動の中でも持続して慢性化しやすい(進行しやすい)タイプでは多くの部位から不整脈が出現しやすくなります。

http://circep.ahajournals.org/content/3/1/39.long

さらに少し細かいことをいいますが、心臓に分布する自律神経には外因性と内因性の支配があります。脳幹や脊椎から調節は外因性であり、一般的には自律神経といえば外因性支配のことをイメージされています。

一方、内因性の自律神経は心臓内部のみで活動している自律調節システムです。

心臓の中には内因性の自律神経節という神経の集合場所があります。すくなくとも5つの場所にその集合点があり、それぞれが心臓の中でお互いに調節しあっているのです。

自律神経も電気的な信号により活動をしているので、神経節の場所は10Hz-20Hz程度の電気刺激をカテーテルの先から送り込むことにより同定できます。

神経節への電気刺激により心臓が数十秒も止まるような徐脈の反応が出現し、必ず不整脈が出現しますので、いかに自律神経の活動が不整脈の発生に影響を与えているのかということを伺えます。

治療により熱を発生させる時にも徐脈反射は本当によく認めますので、いつ起こってもいいように、心室にバックアップ用のペースメーカーの留置が必要です。

そして治療後に自律神経の反射反応がたくさん残存する患者では、治療した後も不整脈がでる場合が多いという結果でした。

https://www.heartrhythmjournal.com/article/S1547-5271(14)01400-3/fulltext

日常生活では精神的、肉体的ストレスがあると急激な自律神経の変化を助長するため、動悸や息切れの症状がでることがよくあると思います。

心臓病一般にも当てはまることですが、不整脈においても自律神経を極端に変動させないように心と体の状態を安定させるように心がけておくことは不整脈を持たれている患者さんでは大切です。

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