院長コラム
Column

血圧の薬一生ですか?

2018年11月30日

血圧の薬は飲むべきでないという論調の週刊誌の記事をみて自身で判断して薬をやめられる方もおられますし、副作用を心配されていろいろ質問される時が定期的にあります。

いろいろな不安があるのだと思いますが、「一度薬を服用すると一生服用しないといけないのでいやです」という理由が多そうです。

血圧については以前にもコメントをしましたが、診察時に感じていることを改めて書いておきます。

薬に関しては人それぞれの考え方がありますが、高血圧の患者さんは薬をできるだけ飲みたくないと思われている人が多そうです。その性質を高血圧気質と言われる医師もいます。

白衣高血圧を自称される方も服薬したくないという意思表示の一つかもしれません。薬は毒と表現される人もいます。

批判記事に対してうまく反応できない私自身の責任もあると思いますが、医師と患者の関係がぎくしゃくする内容だと感じます。

その時点では、すでに不信感もあり、いくら冷静に処方の必要性を説明しても患者さんはこちらの意見も耳に入らなくなっている時もあります。

そこで不機嫌な反応をするのはダメ医者の典型ということのようですが、信頼されていないのだと感じてしまいますとこちらの心中もおだやかではなる時もあります。

そして本当に大切だと思っているから少し機嫌が悪くなってしまうというのもあるのだと思います。管理においては私なりのこだわりもあることも一因かもしれません。

もうけのために処方しているという論調もあります。一応念のため書いておきますが、当院は複数の薬局での院外処方ですし、多く処方するメリットは全くありません。

血圧の薬を服用する理由は、将来の臓器障害を予防することです。血圧の高い状態が長期間続くと、血管にも負担がかかって動脈硬化の原因になりますし、まずは目、腎臓、頭の小さな血管が傷害され、それぞれの機能低下をきたしてきます。歳をとれば小さな脳梗塞もどんどん増えてきます。

大きな血管に傷害が及ぶと心筋梗塞、脳梗塞、大動脈瘤などの生命予後に影響を及ぼす病気にも発展します。

一度血管のトラブルがあった、心臓の病気がある、腎臓の機能が低下している、糖尿病などの動脈硬化のリスクが他にもある方では、服薬による血圧の管理は大切です。

高血圧以外の背景にある病気を全く無視して、シンプルなメッセージを出すことに多くの混乱がおきているような気もします。

ご高齢になると血圧の変動に伴う副作用が目立つため、用量をうまく調節する必要があるのだと思いますが、それでもほったらかしでいいというわけではありません。極端に高い血圧は脳出血などの原因にもなります。

長い間血圧が高いのをほったらかしにしていたので、血圧の薬の副作用が多くなるということもありそうです。

もちろん急な血圧の低下は認知症や腎機能の低下の原因となるかもしれませんので、病状にあわせた適宜の調節が必要です。

癌の発生を増加されるという論調もありますが、いまのところは推測レベルの話でそれを理由に中止するデメリットの方が多そうです。

血圧は歳とともに高くなる場合がおおいですが、ストレスの軽減、ライフスタイルの改善などにより管理がよくなることはよくありますので、その時は薬はやめることができます。

しかし、服薬にて管理が良好な場合には、長期間のみつづけることにより血管や臓器の負担を軽減していくことが、いつまでも元気に長生することにつながるのだと考えています。

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