院長コラム
Column
外国人への医療現況
2019年05月27日
当クリニックのあるビルの前が、観光バスの停留所になっていることもあり、クリニックの前を歩いている人の半分以上は海外の方だと思います。
観光客の方はどんどん増加し、去年は1200万人の方が来阪されたそうです。去年は訪問率だけでは東京よりも高く全国で1位です。
この10年位の間では年間24%ずつ増加しているそうで、その増加率は世界の都市の中で一番とのことです。3年ごとに倍増というイメージですね。
インバウンドとして大阪の景気も上向いているのでしょう。
しかし、特に案内施設もあるわけではなく、困ってうろうろしている外国の方も多そうです。このままで大丈夫?と少し心配になる時もあります。観光地としてもう少し整備すべきではないかと感じる時もあります。
クリニックにも来院される海外からの患者さんもこられます。
思い返せば当クリニックが開院した最初に来院していただけた患者さんも日本語の話すことのできない中国からこられた患者さんでした。
付き添いで通訳していただける方がおられない場合もあります。
多くの方は英語は理解されますが、英語も全くできない場合は電話による通訳サービスや通訳ソフトなどが必要です。
Googleなどのインターネットの翻訳ソフトを使えばすぐだと思われるかもしれませんが、その内容をいちいち確認してやりとりするのは、決められた時間の診療では至難のわざです。
外国の方を診察するのは通常の3倍以上のエネルギーと時間を必要とするイメージです。
自国の保険で支払う場合、その費用や治療内容を証明する英語での書類や承諾書の作成が追加必要となる時もあります。
もちろん一番の大変な理由は語学の壁ですが、それだけではないような気もします。
海外の方が日本の医療のしくみや保険のシステムを理解していないという問題もありそうです。
日本の医療システムを理解できないと、短い診察時間では満足できませんし、その説明にも手間がかかります。ひとつひとつかかったコストの理由の説明を求められるかたもいます。
時には専門外や緊急を要する患者さんもこられます。その時には他の病院を紹介する必要もあります。
クリニックの近隣にも大きな基幹病院がいくつかあります。しかし受け入れをお願いした時、多くの場合は断られてしまいます。
当院のスタッフが、紹介先探しに1時間以上かかりきりということもありました。
病院の受付のレベルで、語学対応ができないということが理由として一番多そうです。
滞在先のホテルもよほどの高級ホテルでない場合は、十分な説明や対応もしないようで多くの場合直接来院されます。
ホテルでも調子を崩された観光客への受診先さがしは困られているのでしょう。ネットでの対応可能病院に連絡してもほとんど断られるようです。
よく新聞で、医療ツーリズムのことを取り上げる記事も目にします。景気の改善につながるため、積極的に受け入れるべきであるという論調です。
健診や高額の自費治療など、うまく回っている領域もあるのでしょう。しかしながら、それからはずれる本当の実地の医療では混乱してそうです。
医師やスタッフ個人の頑張りと使命感でなんとか持ちこたえているという現状なのでしょう。
多くの外国人患者さんを診察している先生の話では、ここは本当に先進国なのですか?といわれる時もあるとのことです。
外国人に対する医療の問題はこれから必ず表にでてくる問題なのだと思います。観光客の方が失望すれば評判も悪くなり、その数も減ってくるかもしれません。
経済的な利益を期待して多くの海外からの方をどんどん受け入れるのであれば、それに併せて現場の医療システムも整備していく必要があるのだと感じています。