院長コラム
Column

擬陽性、偽陰性

2020年02月21日

感染経路がはっきりしない新型コロナウイルスの感染例が日本でも広まりつつあり、ニュースでもその話題でもちきりですね。

日本は中国に次ぐ発症の人が多いことから世界の人は日本のことについて心配しているとのこと。

経済的なダメージも多く、日本での肺炎が確認された後、GDPは6%も低下したそうです。世界から心配されるほど経済的な影響も強くなるという複雑な心境ですね。

有識者と言われるコメンテーターもいろいろな持論をマスコミで展開されています。なるほどと思うこともありますが、一方では少し無責任ではと感じることもあります。きっちりとした感染症の知識をもった人だけが発言されたほうがいいようにも感じます。

診断された人のプライバシーもかなり公表され、魔女狩り裁判の様相もでてきています。一時閉院せざるをえなかったクリニックもあり、他人事ではすみません。

感染の拡散を防止するためには、たとえ軽症の人でも疑いのある人にはどんどん検査をしろという意見も多いのでしょう。

しかし、本当にきっちり診断できるのか?ということには注意が必要なのだと思います。診断検査の結果は100%正しいという前提で議論がされているようにも感じます。

感染症の場合、一般的には細菌やウイルスの抗原や抗体を測定して診断するのですが、結果の解釈に困ることも含めそれなりの割合で間違いがでてきます。

たとえ検査法の精度が高かったとしても、発症からの時期、検体の取り方、あやまったウイルスの混入などが考えられますので診断結果のすべて正しいわけではありません。結果が正しくなければ誤診もおこります。

DNA鑑定で犯人と判決された人でも冤罪の可能性はありえることと同じことです。

繰り返し検査を行えばという意見もあるかと思いますが、検体の処理の許容範囲が限られていますし、診断までの長い時間も要します。そして相反する結果がでた時にもその解釈には迷います。

検査の精度を表すのは感度や特異度で評価されます。

診断検査の結果が陽性となった場合、本当にその病気である確率が感度です。逆に検査の結果が陰性の場合、本当にその病気ではない確率が特異度です。

通常の検査では、感度60-90%、特異度80-95%とされています。

新型コロナウイルスでは、遺伝子(RNA)の増幅検査(PCR)により診断していますので、制度の高い信頼のある方法なのだと思います。

クルーズ船で閉じ込められた人の場合、仮にPCRの検査を仮に感度95%、特異度99.9%としたとします。

実際の船内の有病率を仮に30%とすると、検査で陰性と判断されても実は感染していた(偽陰性)という人は50人程度でてきます。一方、陽性と判断されても2人程度はそうではない(擬陽性)ということになります。

この場合、たとえ診断結果が陰性であったとしても無罪放免というわけにいかないので引き続き拡散しないような注意が必要です。

各クリニックでも測定できる簡易的なキットをという声もあります。

インフルエンザの簡易検査は、感度は60%程度、特異度は98%程度といわれていますので、新型コロナウイルスの診断率がそれと同じ程度としても、かなりのかなりの数の患者さんを誤診することになり、ますます混乱しそうです。

インフルエンザのように特効薬があるのなら、どんどん診断して結果に基づいて治療をしていくというのでしょう。しかし、今回の場合のように対症療法や隔離安静というのが基本になるのであれば、診断はかならずしも必要ないということにもつながるかもしれません。

もちろん今でもインフルエンザやエイズの薬、さらには一度罹った人からのワクチンの有効性も示唆されていますし、肺炎の特効薬が早々にでてくればよいと思います。

しかし、目の前の検査の結果だけを絶対視し、それだけに振り回されてパニックになるのではなく、咳やくしゃみなどの強い症状があれば人にうつさない、周りの人は近寄らないという昔ながらの注意や対応が大切なのだと感じます。

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