院長コラム
Column

環境変化と病気

2018年07月09日

西日本を中心した豪雨により多大な被害がでています。土砂崩れなどにより多くの人がお亡くなりにもなられました。心よりのご冥福と早期の復興をお祈り申し上げます。

地震の後は、豪雨であり、本当に地球が怒っているのかと感じてしまうくらいの災害続きです。人類の積み重ねてきた英知も強大な自然現象の前にはなすすべもなくのみこまれていきます。

古より、自然の変化というのは生命に強く影響を与えてきました。

多くの動物は天候の変化や天災の時は普段と違う行動をとるといわれていますので、人間も自然の変化により強く影響をうけているのでしょう。

ご高齢の方では、天気が悪いと腰とか体の調子を崩すとよくいわれます。私自身も天気がわるいと首とか腰の調子が悪いような気がしています。もとから調子がよくないことが顕在化するという感じです。

おそらくそのストレスを体がなんらか感じることにより、交感神経と副交感神経のバランスが崩れたり、血管の反応異常をおこした結果、さまざまな病気の症状が顕在化してしまうのかもしれません。

気候の変化と病気は関係がいろいろな点から検討されています。また循環器の病気も気候の変動やストレスに強く関係します。

一般的に冬の寒い時期に心筋梗塞に代表される循環器病が増えるのはよく知られています。そして寒い気候によりインフルエンザがはやると、さらにその頻度が増えるということも報告されています。

寒さの変化により血管が収縮して血圧があがったり、感染により血液が固まりやすくなるためです。

以前、大学院生として大阪大学の附属病院で働いていた時、心筋梗塞の患者さんの疫学調査も担当していました。20以上の関連する大阪の基幹病院で、急性心筋梗塞の患者さんをすべて登録いただき、その調査をするという仕事です。

最終的には5000例以上の登録数に及びました。

気象庁の気圧のデータをいただき、その気圧と心筋梗塞の発症との関係をしらべたところ、低気圧がきて気圧変化が大きくなる時には心筋梗塞がしやすくなっていました。

月曜日には心筋梗塞が増えるとされ、月曜日では環境の変化や仕事のストレスが原因という考察です。男性は月曜日に心筋梗塞が多いのに対して女性は土曜日に多いという結果でしいた。

大阪ではよほど旦那さんが家にいるのがいやでストレスなのだということで笑い話になっていました。しかし後輩の先生がこの結果を海外の学会で発表したところとても面白い所見だということで、最終的には英文論文にもなりました。

少し余談です。

数か月前、日曜の夜にやっているサンデーステーションというニュース番組の制作の方から月曜日には心筋梗塞が増えるということについてコメントを求めるメールがありました。この論文のことを紹介したところ、大阪大学のデータとして番組で紹介しましたとのことでした。

残念ながらその返事を確認した時には番組が終了していましたので、私は見ていいませんが、返事から放映までのほんと1時間程度で、共著者に連絡しすべて了解を得ましたとのことでしたので、ニュース報道というのはスピードあふれる運営をされているのだとあらためて感心しました。

クリニックでも、天気が変化して崩れる時には体の不調を訴えて受診される患者さんが多くなるような印象があります。そして大きな自然の変化が起こった時には、裏では病気も発生しやすくなっているということも注意が必要なだと思います。

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